【移住者インタビュー】20代で地元に戻るって、実際どう? 中土佐町・大野見で働く23歳の本音

  • 氏名 高橋 柊人
  • 移住した年 2024年(Uターン移住)
  • 出身地 中土佐町大野見
  • 世代 20代
  • 現在の職業 中土佐町役場 職員
  • 移住前の職業 電気施工会社 会社員
  • 現在の居住地域 大野見地区

標高300メートルの大野見の朝は、霧に包まれて静かだ。朝7時、弁当を詰めて車に乗り込み、遠くに海を見下ろしながら坂道を下っていく。

高橋柊人さんは、中土佐町役場のまちづくり課で働いている。中土佐町の山里・大野見地区の出身。高校卒業後に東京で働き、昨年Uターン移住者として、地元に戻ってきた。

まちづくり課での担当は観光だ。テレビ番組の誘致やイベント運営など、町のPRに関わる一方で、町が運営する観光施設の管理も担う。

「管理って聞くと地味に思えるけど、経営の視点も必要。現場の人と話しながら、どうすれば長く続けられる仕組みになるかを考えて動いてます。」

新しく始めるだけでなく、続けていくこと。現場を支える仕事は、派手さこそないが、まちの土台をつくっている。

東京では電気施工の会社に勤めていた。3年が経つ頃、顧客と職人、上司の間を調整する日々に、心身ともに限界を感じた。

東京での暮らしは刺激的だった。遊ぶ場所も食べる店も、数えきれないほど広がっている。それでも、「いつかは帰る」と18歳の頃から心のどこかで決めていた。

「家の裏に川が流れている環境で育った自分にとって、自然に触れたり、スポーツをするのにもお金がかかる東京は、少し窮屈でした。」

歩けば誰かが声をかけてくれる距離感、自然の近さ、仲間とすぐに集まれる親密さ。東京を経験したからこそ、小さな町の“確かな良さ”が輪郭をもって見えてきた。

今は仕事が終われば、体育館でバレーボールをしたり、ギターを弾いたり。社会人が集う同好会が多く、仕事終わりに“何もない日”がほとんどないという。

最近は、職場や地元の仲間を誘って、サバイバルゲームと雪合戦を組み合わせた“新しい遊び”を試した。

「コンビニまで30分かかる町やけど、やりたいことがすぐ試せるスピード感があるんです。」

小学校の同級生6人のうち、ほとんどがこの町で暮らしている。時が経ち、人が減っても、変わらない“好き”が大野見にある。便利さの代わりに得たのは、ワクワクをそのまま形にできる自由だ。それこそが、高橋さんの「まちづくり」の原動力になっている。

 

インタビュー&写真&文章 鈴木弥也子