・氏名 高橋謙太郎
・移住した年 2025年 (Iターン)
・出身地 神奈川県
・世代 50代
・現在の職業 地域おこし協力隊 企画・ど久礼もん企業組合
・移住前の職業 リゾートホテルの調理
・現在の居住地域 大野見地区
・企画・ど久礼もん企業組合 https://www.dokuremon.com/
静岡・伊豆で10年以上、ホテルのフレンチ料理長を務めてきた高橋謙太郎さん。「一度、立ち止まってみよう」と仕事を辞め、車中泊で2ヶ月の旅に出た後、縁もゆかりもなかった高知県中土佐町に移住を決めた。現在は、カツオの加工品の製造販売を行う「企画・ど久礼もん企業組合」で地域おこし協力隊として活動しながら、カツオの解体技術を学ぶ日々を送っている。

移住のきっかけは、料理長という仕事を手放したことだった。
「転勤のたびに1から出直して、新しいチームをまとめる。それに正直、疲れてしまって」
退職後、気の向くまま旅をして、ふと「別の土地で暮らしてみてもいいかな」と思い始めた頃、全国移住フェアに足を運んだ。そこで目に入ったのが、金色のカツオが描かれた旗、中土佐町のブースだった。

「パートナーがカツオ好きで、高知のカツオはうまいって聞いてたんですよね。のぼりに描かれていた金のカツオに呼ばれた気がして」と高橋さんは笑う。
その後、有楽町で開かれた高知限定の移住フェアにも参加。中土佐町の担当者から「とにかく1回来て」と背中を押され、翌春3月に移住体験住宅で2週間を過ごした。そこで出会ったのが、初ガツオだった。
「冷凍しないで水揚げされ翌日に出荷される。この町の鮮魚店で食べたカツオの刺身の美味しさは、今まで食べてきたものとまるで違った」
それは、高橋さんがこの土地の本気を感じ取った瞬間だった。
移住を決意させたのは、魚だけではない。体験滞在中に地元の鮮魚店から「暇なら魚おろしに来ない?」と声をかけられ、紹介された農家では畑仕事を手伝い、イノシシの解体にも誘われた。
「お金を介さずに、人と人がつながる感覚。これまでの居住先で、どこにもなかった雰囲気でした」
現在は里山エリアの大野見に暮らしながら、漁港のある久礼でカツオの加工を学ぶ日々。
「今までの調理経験から、素材の良し悪しは肌でわかる。だからこそ、ここの魚をもっと知りたい」と話す。将来は大野見で畑をやり、自分の店を持つ夢も膨らんでいる。
最近は、ハネとなるカツオを加工したジャーキーが周囲からも好評だそう。元料理長の新たな挑戦は、まだ始まったばかりだ。

インタビュー&写真&文章 鈴木弥也子
